再生にして新生のためにわたしがピックアップした香気は、... «アビシニアン [Abishinian]»

再生にして新生のためにわたしがピックアップした香気は、かって自分があらゆる過去を消し去って旅立つさいに利用したのとおなじ白檀だった。ゲランのサムサラ(これは輪廻を意味する)の核にもなっている、仏教的な香料にして、西洋世界では古来から防腐の性質をもった芳香物質としても知られる白檀。

わたしは白檀のエッセンシャル・オイルを一滴、二滴とその衣類の山にふりかける。一つひとつに、念いをこめて。

においは生命力の証しであり、もはや死の従属物のそれではない。

クロープ白檀。白檀の樹は、チークの大喬木、丁字、グアバの高木などに根を選わせて寄生する。その根はクローブ蛸の吸盤のようにチークを、丁字を、グフバを宿主にする。寄生して養分を摂り、樹齢三十年を経てから心材の内部にて精油をつくりはじめる。いずれ、その間に、宿主は死ぬ。

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